今年のお正月も松が明けて、足早に過ぎて行きました。好物の【伊達巻き】料理も過ぎて行きました。表舞台に一度だけ登場する伊達巻は儚い運命の様です。子供の頃から本当に美味しい食べ物だと思っていました。これが年に一度だけしか出てこないとは残念です。
子供の時、100円を握りしめ、三本立ての映画を見て帰りにはラーメンを食べる。ラーメンは確か35円でした。50円を出すと【五目ラーメン】が食べられたのです。
伊達巻の入った五目ラーメンは大人になった気分を密かに味わいました。小遣いを溜めて、映画の後に五目ラーメンを食べる。これは隠れた楽しみでした。
その中には黄金色の【伊達巻き】が入っているのです。贅沢の極みの様に思えて誰にも言えず満足を噛みしめたのです。しかし、最近の五目ラーメンに伊達巻が入っていません。どうして五目ラーメンから伊達巻きが消えたのでしょう。
台湾で仕事をした時に客先から接待を受け、皿にのった【台湾カステラ】が出て来ました。味は伊達巻きにそっくりです。この食べ物は?と聞けば、カステラという。卵と魚のすり身で造られていると言うのです。皿に乗った正に【伊達巻き】と思えるのです。
正月のおせち料理・伊達巻きは【巻物(書物)】と見立てて学問や習い事を意味する縁起物としていると言われます。ふわふわと黄金色のテクスチャーは、味と美を備えた存在感があります。『お前たち 良~く 味わって食べろ!』と、全体が主張している様に思えてくるのです。