残日録

鐵は国家なり

新日本製鉄はUSスチールとの買収交渉が決まる寸前にバイデン大統領、次のトランプ大統領の政治問題に巻き込まれてしまいました。
我々が学生の頃、USスチールは正に【世界の大鉄鋼メーカー】でした。そして自分は採鉱・冶金科で【鐵】を学びました。鉄の融点は1,539℃と教わり、その後、ある場所で1,538℃が正しいと言われて嫌な思いをしました。クラスの60%以上は鉄鋼産業に就職しています。が、自分は鉄には進みませんでした。
米国は1970年頃から鉄鋼などの重工業から離れて、半導体,医療分野,さらにサービス業などへシフトして行きました。その後、USスチールは衰退の一途を辿って行ったのです。特に鉄鋼の中心地ピッツバーグ市は大きな打撃を受けて閑古鳥が鳴いたと言われています。
日本歴史の中で【】は弥生時代にコメとスキやクワなどのセットで朝鮮半島から入って来ました。それは、田・畑を耕す為に鉄と人間は深く関わって来たのです。その後、土木や武器などで発展して来ました。明治時代、日本の鉄鋼産業は国際情勢背景の下に【官営】として規模を拡大しスタートしました。伊藤博文首相は、その火入れ式挨拶で『鐵は国家なり!』と、大演説をして国の柱とする事を伝えたのです。やがて民営化し、鉄鋼産業は繁栄を極めて行きます。冶金学の発展や細かな作業工夫などを加えて、日本独特の鉄鋼産業は世界をリードする迄になりました。その頃、USスチールは自動車用の高抗張力鋼板技術などに遅れを取り、日本に勝てない状況になってしまいました。それでも米国政府はテコ入れをしなかった事が、今の状態と言えるのでしょう。この辺の政治判断の誤りが後々に禍根を残したと言えます。今、米国は躍起になり中国に圧力を掛け続けて居ます。1958年、日本は中国の宝山鉄鋼に技術供与をして中国は生産努力を続けて来ました。現状の中国の粗鋼量は世界の53%以上を占める程に成長し世界を動かしています。米国は、その事を強く意識しており、米国の象徴的存在のUSスチールが買収される事を大統領は心理的に耐え難いのだと思うのです。日本で言えば、法隆寺や京都御所が米国に買収されるとなれば大騒ぎになるでしょう。
この事は自由貿易を強力に押し進めて来た米国の政策が重工業を蔑ろにした事が失敗に繋がった様に思うのです
因みに日本の鉄鋼生産量は中国の約1/12ですから、高品質な鉄鋼製品で世界と勝負をしなければなりません。今、正にトランプ大統領は【鐵は国家なり】と言いたいのでしょう。

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USスティー工場

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鉄の圧延工場

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