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【残日録】も、今回で100回目を迎える事になります。後、何回発信出来るでしょうか?最近は過去の思い出がやたら走馬灯の様に蘇って来るのです。
中国の言葉に『千里の旅、万巻の書』とあります。万巻の書を読む能力もなく勝手に【千里の旅】をすれば【書】を沢山読む事と同じだと解釈して多くの旅を楽しんで来ました。昔の旅人は交通手段に苦労しただろう。が、現代は自家用車があり簡単に遠方への旅を誘ってくれました。
若い時には温泉好き親友のお供でいろいろな温泉巡りの旅をして来ました。50歳前には国内の温泉地300ヶ所以上を巡る事が出来ました。遠方への出張時には、翌日の一日を割いて温泉場を歩く努力をしたのです。想い出すのは、今どの旅館でも日帰り温泉を容易に出来る様になりました。昔は中々浴(いれ)てもらえなかったのです。旅館の玄関先で『お風呂だけ浴(いれ)てもらえますか?』と聞くのが恥ずかしかった事を思い出します。それでも真剣にお願いすれば親切に浴てもらえました。また地方の温泉には多くの共同浴場が有り利用させてもらいました。
温泉を軸の旅も40歳を過ぎた頃から温泉だけではなく、神社・仏閣などの歴史を訪ねる旅に代わりました。旅は【井の中の小さな自分】を大きな世界へと誘ってくれます。その地に行けば人情、言葉、風習、風景、食べ物など夫々の違う驚きや感動を味わう事が出来ました。さらに悠久なる歴史を見聞すれば、新しい知識が得られる歓びも有りました。住むには大変だったろうと思う様な不便な地にも一所懸命に働く人達が居ます。それらは土地独特の文化を創り真面目に生活している事に感動させられます。最近の人の中には労働を嫌い、苦労をさげすみ、金の為なら卑劣な事を平気やる軽薄な人達を視ていると、どれだけ人間的で立派な人達かと思う事が沢山あり感動させられました。旅は書籍では解らない【空気感】を味わう事が出来ます。例えば、山奥で生き生きと働く若者と話をすれば、人間はかくも多様で豊かである事を知らされます。その土地に骨を埋め様とする人達の強い信念と堅い意志に感動を受けます。
そして山岳重畳の風景や古ぼけた神社を観れば、底知れぬ歴史が埋まって居る事を知らされます。今、老いた年齢になり遠くを訪ねる事は出来なくなりました。昔を懐かしく思い出しながら『心の旅』の幸せを嚙みしめて居ます。
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